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Column
大幸コラム

業界を揺るがしかねない「硝酸」の需要と供給 Part 1

今、「硝酸」が逼迫していることは、ご存じでしょうか?

硝酸はアンモニア系の基礎化学薬品で強酸としての性質を持っています。

自動車部品のめっきや電子部品の洗浄等に使われ、自動車や半導体など広い業界への影響が懸念されています。

ことの発端は、大手硝酸メーカーの設備の不具合により、稼働を停止し、受注、出荷を停止したことから始まりました。

 

出荷再開見込みを、6月中旬として詳細が不明確のままゴールデンウィーク突入、連休明けから当社の取引先様をはじめ、関係各所から途切れることなく問い合わせの連絡があり、個別対応ができなくなるほどでした。

当社も在庫と使用量の把握、硝酸に代わる薬品の検討やテスト、硝酸メーカー各社の出荷状況や在庫、更には価格まで含めた全ての状況の調査に追われる日々が続きました。

同時に硝酸の価格改定の連絡もありました。

 

国内の需給バランスは、主に大手4社の硝酸メーカーにより保たれていました。

その内3社がゴールデンウィークにまたがって、定修に入る予定でしたが、1社にトラブルが発覚したことで定修前の備蓄在庫が作れなかったということです。

それとは関係なく他の2社も予定通り定修に入り、国内で硝酸を製造している設備がほとんどなくなってしまいました。

 

お近く、韓国にも硝酸を製造している大手メーカーがあるのですが、硝酸は強い腐食作用があり、専用容器の使用が必要なため、海外からの輸送も限定的となっています。

更に追い打ちをかけるようにアンモニアを製造するメーカーも定修に入っている為、より一層逼迫度合いが高まってしまいました。

 

元々の背景は、国内に7社あった硝酸生産メーカーがここ数年の硝酸需要の減少で停止又は減産してしまったことです。

  • 2014年 減産・・・旭化成
  • 2015年 停止・・・JCAMアグリ / 日本化成(現 三菱ケミカル)
  • 2017年 減産・・・住友化学
  • 2020年   停止・・・三菱ケミカル
  • その他  減産・・・韓国のメーカー

現在では約3割を韓国からの輸入品に頼っている為、韓国市場に左右されることも必然ではありますが、この現状では韓国からの輸入品を増やさざるをえない状況です。

 

現在の状況(設備故障・修理メーカー)

 

5月11日発表
製造再開時期 未定
受注・出荷  4月26日より受注停止 5月10日より出荷停止

5月16日発表
製造再開時期 7月末の見通し 修理状況で変更の可能性あり
受注・出荷  製造再開後、別途、ご案内申し上げます。

5月24日発表
製造再開時期 7月10日頃
受注・出荷  製造再開後、別途、ご案内申し上げます。

 

弊社では、元々の在庫に加え、早い段階でステークホルダーの尽力により、他メーカー製の硝酸の購入、韓国製硝酸の輸入をすることでリスクヘッジしております。

韓国製はサーチャージなので数倍のコストがかかりそうです。

 

今の日本で硝酸が逼迫するとは…

これは硝酸に限ったことではありません。

知れば知るほど不安になる業界のリスクと課題にこれからも注視していかなければなりません。